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玄米茶の愚痴や、暇潰しの短編を書いたりするよ多分
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 聞いてくれ、久しぶりに定時で変えれたんだ。
 けど更新できるほどの余裕はないので、異世界生活の外伝ならぬ大型没章です、倫理法とかの詳しい説明っぽいのが載ってるかもしれません。

 ちなみに七章の話の没です。

 ただこの時の設定があまりにも玄米茶的に気に食わなかったので、消されたんですよね。まーそれなので、何も更新しないのも好きじゃない私の悪あがきを乗せときますね。

 ちなみに三箇日とか大晦日も休みがないぜ……、けど仕事頑張るよ!!

 場所は一度楽園に戻る。いくら獅子が遠吠えしても威圧さえされなかった鼠が、ようやくその声を聞いて怯え始めていた。
 賢者は殺された息子の墓にひたすらの復讐を誓う。その彼女の変貌に魔導王さえも恐怖を抱いたが、政治における彼の力など殆ど皆無に等しい。頭脳で彼女に敵うことなど魔導王は生涯ありえないのだ。

 どれだけ傷持ち狩りに反対してもそれは変わりはしなかった。結果彼は政戦に負けて地方に追いやられることになった。いくら英雄であったとしても今の賢者は尋常の沙汰ではなかったのだ。

 そしてとうとう彼女が待ちに待った機会が訪れる。単一将軍ルルゴラの娘が九十六通の継承を持ったまま行方知れずになった事が耳に入ったからだろう。正直彼女の安否なんてどうでもいいのだ、まだ彼女が生きていることが重大だからだ。魔導王はそんなかつての仲間を見て剣人と呼ばれ平和の犠牲となった仲間を思うが、彼女はそれさえ忘れているのだろう。

「フェル子供が殺されたお前の気持ちを理解することは俺には出来ないだろう、だがこんな悪夢のようなことを許すな。これじゃあお前の仇と変わらないじゃないか」

 しかしながら彼は友人であり最高の仲間であったが故に彼女を止める。
 何度否定されてもそれは彼にしか出来ないことだからだ。しかし彼女に先は見えない、それは海晴と同じくする奈落の瞳、目の先にはにも見えることはない。ただ純然たる死滅が残っているだけだ。

「それはできないの、恭介だって許さないわ。あの人との唯一の繋がりよ、私の可愛いマイゼミは顔も分からなくなって死んでた。あの傷持ちの悪魔が」
「違うだろう傷持ちじゃない、君が憎いのはただ一人であるべきだろう。そんな君の姿を見てあの恭介が納得するとでも思っているのか」

 役目を終えて消えたこの世界の英雄を思い出しながら紡ぐ。伝説の勇者との子供と言うのだから驚きであるがマイゼミはそれでもあれだったが、英雄賢者の子供なんてものは大量虐殺者の子供に過ぎないのであるから妥当といえば妥当である。
 結局英雄なんて代物は血にぬれるのがお似合いとでも言うつもりだろうか、魔導王は自分を英雄とあげつらっても変わらない。
 賢者かは彼の必死の説得にも耳を貸さない、それどころか四法祝福を彼に突き出した。それは賢者が持つ最強の武器、仲間に断じてむけていい武器ではありはしない。

「フェルよりにもよって俺にそれを向けるのか仲間に」
「だってマイゼミは死んだの、殺されたの、あんな形で、私は恭介に何を言ったらいいの。国を守るって、マイゼミを大事にするって、私は約束は恭介に約束したのよ」

 彼女は泣くように叫んだ。激しい感情が咽喉から零れ落ちた言葉に火が流れ出た。
 だがその言葉を聴いて、魔導王はさらに怒りを強くした。
 
「お前が今現在やっていることの何処が母親だ、子供の変わりに関係のない奴を皆殺しにして、挙句は黒を纏えば殺すとまでいって。それが許されるはずがないだろうが、恭介だって傷持ちだ、恨むなら一人であるべきだろうが虐殺者何を言ったところで子供の供養になどなるわけない。あいつを建前にお前の差別を助長している」

 だが彼はこれ以上喋ることを許されなかった。起動した四法が、彼の首を刈り取る寸先で止まっている。それもまた彼の魔導機である無尽が起動しているからであった、明確な殺意はないにしろ、今賢者は確実に魔導王の命を狙った。
 彼女の目は涙を目に溜めて魔導王をにらみつける。

「そんなことない、いくら貴方でも許せることと許せないことが」
「じゃあ聞くがマイゼミが殺した傷持ちにしていたことを聞いたのか、一つでも聞いたことがあるのか、残念ながら俺はお前の息子と子供も教育できなかった貴様が全ての原因だ、恭介との約束も破って政にふけった貴様の無能がこの状況だ」

 今ぎくりと彼女は確実に図星を指された。

「お前は何をしたいんだ、その怒りを理解することは出来ない。だがこれ以上死を連ねるな、そのためなら俺は自分の命だって惜しまない」
「じゃあ、どうしたらいいって言うの!! マイゼミは死んだの、あの悪魔達の所為で」
「違う貴様の所為だ、ここで起きた全ての地獄はお前が端を発しているだろう。貴様の命令で傷持ちは死んでいった、貴様の心にそんなふざけた感情があるということ自体驚きだ、人の所為にする前に貴様のやったことを考えろ。何かの言い訳をするな」

 けど彼女は首を横に振る。視界には復讐の文字しか彼女には入っていない、魔導王は彼女の本当の気持ちなど分からない。
 理解したことなど何一つないのだ。仲間であるとその本人の心など分かるはずもない。
 ないのだ、何一つない、彼らを繋ぐ仲間の絆さえもう解れた糸にしか見えてしまう。剣人ロウホウが死んで、勇者恭介がきえて、結局残った二人は崩れていく。

「もういい、俺が直接議会に介入する。どうせお前は、その血に塗れた手を汚すことしか出来ない」

 耳を塞ぎうずくまりながら首を振り続ける彼女は、最後の一本の絆さえ切り裂いているのだろう。全てを見ないで、結局瞼の裏側にあるものだけを彼女は見続ける。
 踵を返し、息荒げに帰っていく魔導王は、そんな彼女に最後の言葉をかけることさえなかった。

「けどねヨグス、それでもマイゼミへの復讐だけじゃないの」

 唇同士が離れていく、それが少しずつ感情をくみ上げていった。
 零れ落ちる涙と、釣りあがる頬、それはきっと世界が墜ちて行く始まりだったのだ。浮んだ世界は地に伏せる。

 滂沱の涙と盲目の狂喜が彼女を染める。
 あまりに当たり前のように、彼女は魔導機を起動させた。今までのレベルではない、魔導機だって使い手によって差は出る。ましてやこの賢者は元々四法クラスの倫理使いだ。だが今彼女はその倫理使いの道に確実に外れる、魔導機の属性から分岐する他の四法の属性を引きずり出す、あらゆる道理をその場で支配し。
 魔道の王であるヨグスの魔力壁さえも容易く剥ぎ取り、過剰殺戮さえ可能にする。

 倫理法 外道歩き

 蘇生秘奥である倫理法が攻撃を必要とする時に着けられる倫理法ゆえの外道の名前、全て賢者が編み出し作り出した。本来聖典であるはずの倫理法に、彼女が外道の技を作ったのは一重に戦争に勝つためだ。
 そしてその敵は間違っても仲間ではなかったはずだった。

 そのあとは容易いものだった。まるで木の葉のように魔導王の死体は、壁を貫き柱をまわせた。だが倫理法の攻撃法が総じて外道の名を持っているにはそれ相応の理由がある。逆転である、そもそも新陳代謝の活発化から始まり時間逆転にいたる方法全てが存在するのだ、死ななければ全て蘇生が可能であるといわれる倫理法だからこその外道になる、全ては倫理法の逆転発想によるものだ。

 外道歩き、歩きとは経過を意味する言葉である。外道の中にあっても最高難易度を誇り、絶体絶命を意味する最大法であり祝福を利用しなくては発動することすら許されない、存在経過の絶命までの道を瞬時に経過させる方法つまり時間加速である。
 一瞬で老い朽ち果てる、それが骨になり塵と消えるその描写を一瞬で行なう。

「あの男はマイゼミの仇は恭介と同じところから来た。分かるでしょう、私は恭介に会えるのあの人にその邪魔は許さない。どれほど優しい仲間であっても、私の復讐と目的の為に邪魔なんてさせない」

 世界はまた歯車を一つ廻し間違えた。
 その被害は全て弱いところに写っていく、この日また世界はまた悲しみに包まれた。偉大なる英雄の死、そしてその英雄を殺したのはまたも傷持ちだと公表される。これが世界が傷持ちを殺す全ての理由となる。
 マイゼミの比ではないのだ、最後まで傷持ちをかばいながら傷持ちがそれを殺した。その日を境に殆どの国から血の匂いがなくなる事はなくなった。

「恭介まっていてね」

 仲間を殺したことに罪悪感を感じることさえ彼女はなくなる。彼女は笑っていた、涙を流しながら笑っていた。
 また一人狂う、当たり前のように道を外してしまった。
 感情があってももう止められない、どれだけ理性を働かせても彼女は動いてしまう。届かないはずの可能性に手を触れたから、どれだけの王法を費やしても知識を搾り出しても永劫に近付くことの許されなかった。彼女の愛しき相手、息子が死にそしてまたその相手に届く可能性を見てしまった。

 復讐と渇望が混じりそれは確実な破綻を迎えつつある。
 それは一体どのことか、少なくとも全てであることは間違いない。

「きっと迎えに行くから」

 いなくなった息子の所為で、彼女は恐怖を感じてしまった孤独と言う名の。
 それがまだ生きている希望を求めさせている。喩え仲間を殺してでも、彼女も三度目はない、もう伸ばして届かない手を甘んじて受け入れるほど、英雄の心は強くそして人から外れていなかったというだけだ。

***

 ルッスに作戦を与えてからは彼はゆらりとした物だった。

「キルミーすまんが冷たいのに物を頼む」

 奴隷の兄に彼は飲み物を頼むと、椅子に深く腰掛けた。スプリングなど最初かあるような代物ではない椅子の反発は全くなく埋まっていくような感覚を覚える。
 それで一気に今までの力が抜けた。仕返しも考えた、仲間も出来た、まだしていない事があるとすればこの奴隷達の処理ぐらいのものだろう。だが彼とて疲れた、この一日で彼の疲労は一瞬で極限まで導かれてしまった。

 ことりとテーブルにグラスを置くキルミー、日本人の本能に染み付いた動作はこんなところにまで染み出ているのかありがとうと呟くように彼は言葉を漏らした。
 体の疲れたゴミを流すような香ばしい風味と冷たく咽喉を流れる感覚にちょっとした快楽を感じてしまう。こんなときに無駄に郷愁を感じてしまう、ただ一度彼の姉が夏場に彼に入れて渡してくれた麦茶の事を、あの世界にいて彼が幸せだと感じ一笑の喜びと思った奇跡の物語。

 きっと彼の姉でさえ気まぐれであっただろう。けれども彼が家族に与えられた生まれて以来の優しさだった、その思いで以来後にも先にも幸せを感じたことなんていとどもない。ただ一度の喜びと、それ以外の享受しかなかった。
 小さい物語だ、本当であれば奇跡としてさえ語ることの出来ないようなちょっとした幸せの残滓。

 けれど彼は目を閉じてそれを思い出すことが出来るほどの幸せだった。
 だが今はそれさえ罅割れて、腐り果てた卵のように見えてしまう。それは裏側を見たからなのか、今まで溜めていた負の感情がそう写すのかは彼自身も分からない。もう彼はあれほど大事だった家族の顔さえ忘れているのだ。

 ふと彼は意識を覚ます、いつの間にか寝ていたようで二人の奴隷のどちらかが毛布でもかけたのだろう。そのまま椅子で寝ていた、変なところ寝ていた所為であろうからだの節々が痛んでいた。
 少し寝たお陰が意識だけはしっかりしていた彼は、これからの苦痛を考えて身を一度震わせる。痛みは怖い、きっとまた屈服してしまう、その確信があったしまたあの地獄を思い出せば口さえ渇く。

「けどこれしかない」

 本当な泣いて逃げてしまいたい、けれどその感情は彼にはない。それにどうせ捕まるのだ、どれだけ逃げても個人が国に敵う奇跡など、夢物語以外の何者でもない。それでも逸し報いたいからこそあんな策ともいえない策を考え出した。
 一人になればなんとも知れない感情を浮ばせる。それを恐怖と言うのだが、彼はそんな感情分からないし、またそんな発露があったことさえ理解が出来ない。それはまた埋もれてしまうかもしれない代物だ。震える体を身を縮めて、全てを押さえる、本当にルッスが守るかどうかも分からない約束に全てをかける必要がある。

 信じるしかないというのも正気の沙汰じゃないが、それぐらいしかもう手段がないのだから仕方ない。海晴の本質的な問題だ、信じた人間を疑おうともしない悪い癖は、根本的な彼の人よしによるものだろう。
 疑うことはない、けれど怖い。決めたくせに怯えるジレンマ、仕方ない彼は一度経験してしまっている、内臓を引きずり出され愛撫される経験を、自慰に使われた経験を、内臓全てに針を刺されてあげた悲鳴を、目を抉り出されその場食われた恐怖を、消すなと言うほうが恐ろしいそんな彼の奈落の記憶。痛みは体に残る、痛みは恐怖として刻まれる、それが体に浮ぶ気がした。

 だがその恐怖を必死に耐える、彼は発露した感情は際限なく彼を戒める。それでも彼がまだ叫び声を上げることも、泣き出すことすらないのは、ただそのうちにこもったどうしようもない怒りがそれを燃やし尽くそうとしているから。

 彼は幽鬼の様に立ち上がった、この年にしては広い屋敷をぼんやりと歩きながら外へでる。
 流石に犯罪都市は夜も眠らない、外からは激しい喧騒が響き続けている。その音を聞きながら彼は、少し落ち着きを取り戻した。夜風が涼しく今だけでもと彼に優しくしているのだろうか。

「ふう、どうにかならんものか」

 彼はそんな風に一人ごちる。
 ロクなもんじゃない人生だったがここに来て、急転直下の毎日だからだろう。しかもその直下する先は全て地獄に繋がっているのだから最悪だ。
 震えていた体がいつの間にか止まっていた。咽喉を喰らうように繁殖していた獣の恐怖は消えている。

 そして思い出すのはいつもこの正解の非情さと、容赦のない現実、そしてこの世界に来てただ一つのやさしさであったルッコラ達、けど全て切り捨てた。自分が愚かだということは理解していても、ここまで行かれていれば何処をどうしようと直すことさえ出来ない。
 人の心を持たない人間に人の心を理解させようと言うのは、ただの愚かな行為にすぎないのだ。けれど彼は一つ一つ経験してしまった、恐怖がよみがえり怒りがよみがえる、少しずつだが人間らしくなっていく。

 けれどそれが問題だった、彼は人間になってはいけないのだ。それは世界が認めない、狂った歯車が正常に戻るなど許されない話。それは予備にもならない邪魔な部品だ、いるだけで不協和音をかなり立てる。
 認めるはずない人間に戻っても迷惑をかけ、人間のまがい物でも迷惑をかける。

 不要以外の何者でもない生まれた世界からすら放逐された人間だ。

「けど、これで終わるにはあまりにも大きい想いなんだよ。ここで終わらせるにはいかない」

 心臓を掴むようにして彼は決意を漏らす。
 このうちに秘めた狂喜を抑えるように、だがそれでも零れ落ちるその感情は生涯止まらない。知らずに流れる涙をぬぐうこともせずに、ただひたすらに決意を紡ぐ。そうじゃなければ心が折れてしまうから、そうじゃないと心が腐り果ててしまうから。

 綺麗なものを口で紡ぎ、その実心の中ではここにある全てのものを破壊しつくしたい。

 結局のところ、どちらもかわらない自分本位の外道どうもと言うだけの話だ。
 軽い苦痛でも地獄はある、重い苦痛でも天国はある、結局もう静止の段階は過ぎてしまった。これから先彼はまだ傷つけられる、彼は裏切られ続ける、それでもこの時の言葉は消えない。どれだけ心を消しても結局彼はまたこの炎を胸に動き出す。

「世界なんて腐ってしまえばいい、英雄なんて汚れればいい、宗教なんて殉教し尽くせばいい、そうすればこの世界だって俺が生きていてもいい言ってくれるさ」

 結局誰も変わらない、人間なんて簡単に変われるような生き物じゃない。
 猿は所詮猿のままの道理でしか進化で気やしないのだ。

***

 彼らが物音に気付いて目を覚ましたのは偶然だったのかもしれない。
 ただもしかしたら海晴が彼らを呼ぶかもしれないと想い、彼らは目を覚まし外に出る彼を物陰から覗いていた。
 熟練した戦闘者と言うわけでもない海晴が息を消した人の存在などきずくはずもなく。

 べらべらと一人ろくでもないことをいい続ける。ただこれが普通の人間なら彼らも戯言だと思っただろう、しかし英雄の息子を殺した男がこんな狂気を隠さずに喋っている。世界に対する憎悪を紡いでいる、しかも彼はそれを心に決めている。

 薄ら笑いを浮かべる主人に彼らは恐怖した。今までの彼の姿なんてまだマシだと理解したから。自信に渦巻くその感情を彼は抑えない、誰も見ていないと思って隠そうともしない。  

 二人は見るだけで理解してしまう、彼の言葉は嘘偽りなく事実を言っていると。
 だから怖いのだろう、国と相対するだけであの疲労を感じていた男は、まだ足りないと世界に目を向ける。彼らからみれば海晴は世界を食う化け物だ、こんな人間生きていてはいけないと本心から思ってしまう。

 彼らを安値とは言っても兄妹セット買ってくれた。そして少しの仕事と教育を請けさせてくれた、生活にだって不自由をさせたことはない。二人の恩人といってもいいレベルで彼はこの兄弟を世話した。しかも何の代償もなく、ある時期を過ぎたら奴隷などと言う身分から解消させてやるとさえ言っている。

 それでも彼らはこの人間が怖かった、どれだけ涙を流していても人間になんて見えなかった。

「おにーちゃん、だんな様が怖い」
「気にしちゃいけない、あの人はああいうお人なんだ」

 兄は妹を怯えさせないように必死に笑顔を取り繕う。歯が重なり合わずにガチガチと鳴っていたとしても、必死に必死に絶える。
 今彼の視界の中にはいれば殺される確証を彼は持っていた。妹を必死に抱きしめ、震える体を必死に止める。

 そして彼もまた涙を溢してしまう、知らなければ良かった、知ってしまっていい事じゃなかった。
 そうでなければきっと怯えながらも恩人のままでいられた。こんな人に救われた自分が汚らわしい、醜いものだと思ってしまった。

 こんな人間のまがい物に救われてしまったことに彼は人間としてのプライドを傷つけられたように思えた。
 恐怖を感じて、怯えるのも感じて、結局最後にこんな人間がいることに彼は憎悪を描いた。奴隷よりも卑しい男、奴隷よりも惨めな男、奴隷よりも無残な男。それはひとたび人間を模した欠落感情人形が、彼に一つの言葉を刻んでしまった。

 差別と言う名の人間の業を

 それは虫に救われた人間の浅ましさ、蛆蝿にたかって生を得る人の度し難き光景、いやそれよりも醜悪だ生きている価値の無いものに救われた自分の惨めさ。その感情はきっと恐怖を隠すためのものだ、感情を持つが故にその指針がずれてしまった。不協和音は当たりに外れた音を響かせる、必要ない歯車が全ての動きを破壊した。

 いま世界は正常を求めるが故に一つの決断を下す。
 だがそれでも知らないだろうこの世界は何時までも、この日最初の歪みが浮んだのだ。ただ同時にあらゆる異変は当たり前のように起き、世界の決断より早く歪みは進行していったのだ。

 その世界の正常の決断すら置き去りにする速度で。  

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